鶴澤奏ピアノリサイタル《内なる歌、その飛翔》、無事終演しました。
おかげさまで、これまでの鶴澤さんのリサイタルの中でも最も多くのお客さまにお越しいただき、温かな拍手に包まれて公演を終えることができました。
本人は今回のプログラムを「ど直球」と話していました。
けれど、シューマン《アラベスク》から始まり、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第28番、リスト《波を渡るパオラの聖フランチェスコ》を経て、シューマン《幻想曲》へ――。
一見すると王道の名曲を並べたようでいて、実はそこには、彼女自身が考え抜いた一本の道筋がありました。
そして昨日の演奏は、その意図を言葉で説明する以上に、音楽そのものからしっかりと感じ取れるものだったと思います。
鶴澤奏というピアニストの魅力を、改めて強く感じる一日となりました。
お越しいただいた皆さま。
そして、さまざまな形でこの公演を応援してくださった皆さま。
本当にありがとうございました!
ご来場くださったお客様の“生の声”を、許可をいただいたうえで以下にご紹介いたします。ぜひご覧ください。
鶴澤奏 ピアノリサイタル
内なる歌、その飛翔
タイトルに負けない内からの飛翔だった。
ベートーヴェン「ピアノソナタ第28番イ長調」は記憶に薄い曲だったが、内密な感情が満ち溢れるさま、火照りの鎮まりそして軽やかさから壮重なフィナーレへと鮮やかなコスモスを閉じていった。
鶴澤奏はベートーヴェンのコスモスのその先の飛躍へと後期ロマン派の2曲を選んだ。
リスト晩年の「波を渡るパオラの聖フランチェスカ」は何度か聞き齧りながら途中で放棄してしまったりしていたが、本日の演奏にはもろともに惹き込まれた。ピアノの怒涛の如き音の波飛沫にまみれながら弾く鶴澤奏の手は4本あるかのようだった。彼女の演奏自体が奇跡だった。
シューマンの「幻想曲ハ長調」は、当時ベートーヴェン像の建立計画もあり、その折に作曲始められたという。またシューマンがクララとの結婚を彼女の父から執拗に反対されていた時期でもあり、紆余曲折の末完成した「幻想曲」はベートーヴェンへというよりは2人の薔薇色の将来を夢見ていたように思える。
結局は演奏している鶴澤奏もクララとなった。これは「幻想曲」を弾く者の宿命であろう。
かくして「内なる歌、その飛翔」と題されたリサイタルの円環は閉じる。最初にあったシューマンの「アラベスク」は思えば最適なプレリュードであった。



