12月4日、鶴見区民文化センター・サルビアホール、音楽ホールにて開催された《山根風仁 J.S.バッハ/F.グリュッツマッハー 無伴奏チェロ組曲全曲演奏会 vol.2》は、おかげさまで多くの方にご来場いただき、無事終演いたしました。
今回取り上げられたのは第2番・第4番・第6番。
前回の第1・3・5番よりもさらに大胆で、ある意味では“バッハの精神から逸脱”しているとも言えるほど、19世紀ロマン派的な編曲が施されたこの後半3曲。
アンコール前のMCで山根さんが「バッハの時代でも現代からも禁じ手とされるだろう部分が2,000箇所くらいあります(笑)」と語ったように、
随所にオリジナルには存在しない和声・重音・フレージングが加えられ、聴き馴染んだ“あのバッハ”とはまったく異なる響きが会場に広がりました。
しかしそれは決して悪趣味でも、過剰でもありませんでした。
むしろ、その自由さこそが直接的に心に届き、誰の耳にも「美しい」と感じられる瞬間に満ちていました。
それが可能だったのは、山根さんの演奏が技術的にも解釈的にも望みうる最高のクオリティを備えていたからに他なりません。
音色のコントロール、語りかけるような間合い、ロマン派の情緒とバッハの構築性の絶妙なバランス。
そのすべてがあって、ようやくこの「異形のバッハ」が作品として成立し、むしろ“バッハを深く知っているからこそ奏でうるもの”として受け入れられたのだと感じます。
アンコールでは、あえてバッハのオリジナルの第1番プレリュードが演奏されました。
その一音一音が、まるでこのシリーズ全体をやさしく封じる「円環の結び」のように響いたのは、聴き手にとっても忘れがたい時間となったのではないでしょうか。
ご来場くださったお客様の“生の声”を、許可をいただいたうえで以下にご紹介しております。
ぜひご覧ください。
鶴見のサルビアホール「グリュッツマッハー編曲版によるバッハ無伴奏チェロ組曲全曲演奏会vol.2」へ。
チェロの揺籃期に舞曲だけによる6曲もの無伴奏曲集を遺したバッハ。約150年を経てその自由な二次創作を世に問うたグリュッツマッハー。ふたつとも各時代の前衛な試みだったに違いない。原曲からリズムも旋律も改変され、高いポジションの技巧も加えられてロマン派の風趣満載となった演奏至難の曲(2、4、6番)を、着実に音にしていく山根風仁さんのテクニックと音楽性が眩い。
2つの時代の前衛が生んだ作品はいま異端と言われる。自分はそうは思わない。バッハ自身も前世代の作品を大胆に編曲しているし、シューマンやマーラーも然り。当時の作曲家や名編曲家による編曲作品はいまも多くが手つかずで眠っているが、今後はこの「沃野」が開拓されていくのではないか。その口火となることを思わせる刺激的で意義深いコンサートでした。


