知られざるサン=サーンスと、忘れられた楽器ハルモニウム――
その出会いがもたらす、再発見のひととき。
2025年、生誕190年を迎えるフランスの作曲家カミーユ・サン=サーンス。
「白鳥」や「交響曲第3番《オルガン付き》」などで知られる彼の名は広く浸透している一方で、その膨大な作品群のほとんどが、実際の演奏の場からは遠ざかったままです。
みのりの眼ではこのたび、「サン=サーンス生誕190年記念連続公演」として、知られざる室内楽作品と、19世紀フランスで活躍した鍵盤楽器《ハルモニウム》の魅力を組み合わせた2回の特別演奏会を企画しました。
ハルモニウムは、パイプオルガンの代替として家庭や小教会で愛用された楽器であり、サン=サーンス自身も若き日から親しんでいました。彼の作品全体の中でハルモニウムが登場するのは限られた数ではありますが、その音色は彼の美学の一端を、繊細かつ素朴なかたちで伝えてくれます。
第1回公演(9月17日/五反田文化センター)では、ヴァイオリン、チェロ、ピアノ、そしてハルモニウムによる多彩な編成で、晩年の抒情的な作品を中心に演奏します。ハルモニウムが使われる《祈り》や、四重奏による《舟歌》、ピアノ三重奏による《ミューズと詩人たち》、さらにはヴァイオリンとピアノによる名品《三部作》など、いずれも精緻な詩情を湛えた作品ばかりです。
第2回公演(9月28日/やなか音楽ホール)は、ピアノとハルモニウムによるサン=サーンス初期の作品《6つのデュオ》全曲を取り上げる貴重な機会。さらに、フランク《前奏曲、フーガと変奏》やヴィドール《6つのデュオ》など、同時代フランスのハルモニウム作品も併せて演奏し、この楽器の多彩な表情を探ります。
時代の変化とともに忘れられていった楽器と、顧みられることの少なかった作品。
この2つの「再発見」は、過去を掘り起こすだけでなく、私たちの耳の感受性そのものを広げる契機になると信じています。
そして何より、これらの作品の真価が浮かび上がるのは、生演奏ならではの響きの中にあります。
19世紀末の音色を想像しながら、未知の傑作たちと出会う時間を、どうぞお楽しみください。