🌙 夜のすべてが、ネクテールの笛に耳を澄ましていた——
フランスの作曲家、シャルル・ケクランが晩年に書いた《ネクテールの歌》。
アナトール・フランス『天使の叛逆』に登場する、年老いた牧神ネクテール。
彼が夜の森で吹く笛の音に、木々も、動物たちも、そして夜そのものまでもが耳を澄ます——。
その幻想的な情景から生まれたのが、無伴奏フルートのための全96曲という、ケクラン晩年の不思議な大作です。
今回は、全96曲録音CDのリリースを記念して、フルートの木村麻衣子さんが《ネクテールの歌》から選りすぐった作品を演奏。
さらに、川上啓太郎さんによる
「ホメロスからマラルメまで——牧神の笛が描くポリプティックの秘密——」
と題したレクチャーを交えながら、この作品の背景に広がる神話、文学、そしてケクラン独自の音楽世界を辿ります。
ピアノも、伴奏もありません。
一本のフルートだけ。
けれど、その向こうには、森があり、夜があり、遠い神話の世界があります。
50席だけの小さな空間で、ケクランが晩年にたどり着いた静かな世界を。
