グリュッツマッハーによる『コンサート版 バッハ 無伴奏チェロ組曲』と出会ったのは、4年前、イギリスの大学院で修士論文に取り組んでいた時でした。その楽譜には、時に原型を留めないほど自由な装飾が加えられ、ロマン派のエッセンスに満ちたその書き込みに驚愕したことを覚えています。
いつか19世紀の演奏美学を自分のものにし、この版を演奏してみたいと思っていましたが、ついにその機会を得られたことに胸が高鳴っています。
19世紀の音楽の大きな特徴の一つは、演奏家自身の解釈が演奏に色濃く反映されていたことです。
たとえば、「わたしはこの作品をこう解釈する」といった演奏家それぞれの考えが、時代の流れの中でロマン派音楽における演奏習慣となっていきました。
その背景には、作品が広く出版されるようになり、楽曲が作曲家の手を離れていく中で、演奏家の個性がより重要な役割を果たすようになったことがあるのかもしれません。
このグリュツマッハー版も、そうした時代の流れを象徴する一例と言えるでしょう。
この演奏会では、19世紀の演奏家の眼を通した18世紀の作品を、21世紀の演奏家と聴衆が共に楽しむという、非常に珍しい体験をお届けします。この『コンサート版』が生み出す、独特の音楽世界を、ぜひ会場でご体感ください。
(山根風仁)
【プログラム】
・J.S.バッハ / F.グリュッツマッハー 無伴奏チェロ組曲 第1,3,5番
全席自由 4,000円
日程:2025.6.6(金) 19:00開演(18:30開場)
場所:鶴見区民文化センターサルビアホール 音楽ホール